「赤道直下の国に雪が降る山がある」——そんな話、信じられますか?
ナイロビから車でわずか数時間。そこには、アフリカ第2の高峰・**ケニア山(Mount Kenya)**がそびえています。標高は5,199m(登頂可能なピークは4,985mのポイント・レナナ)。通常3〜5日間で登山が可能で、登山初心者でもポーターガイドと一緒なら十分チャレンジできる山です。
今回私は、景観が美しいことで知られる**チョゴリアルート(Chogoria Route)**から登り、下山はシリモンルート(Sirimon Route)という二つのルートを体験できるコースに挑戦しました。
初日:大雨の歓迎、そしてびしょ濡れのスタート
旅のスタートは11月3日、朝6時にナイロビを出発し、登山口となるチョゴリアの町へ。標高2,000m付近のこの町で昼食を取り、そこから車で森林地帯の入口まで移動します。
しかし、天気はあいにくの雨。しかも本降り。最初の目的地**Meru Bandas(標高2,950m)**までの2時間のトレッキングは、泥道をひたすら進む、いきなりの試練に。テント泊の予定も、急遽現地のバンガローに変更し、暖炉で濡れた衣服や靴を乾かすはめに…。「明日も雨だったら登頂は断念しようか」そんな話も、仲間との間で囁かれるほどのコンディションでした。


2日目:絶景のLake Ellisへ
ところが翌朝、空は一転して快晴!気を取り直して登山を再開し、**Lake Ellis(標高3,650m)**を目指します。道中、前日の雨で川が増水しており、靴を脱いで川を渡るアドベンチャーも。
標高が上がるにつれて空気は薄くなり、風景はジャングルから高山植物が茂る世界へと変化していきます。そして目の前に広がるLake Ellisの景色は、まさに“ご褒美”。登山の疲れを一気に吹き飛ばしてくれる絶景でした。ここでは、同行したシェフが湖でニジマスを釣り、そのまま夕食に。山の上で味わう新鮮な魚料理、忘れられません。


3日目:4200mへ。豪雨としびれと雪の兆し
この日の目的地は、Mintos Hut(4,200m)。快晴でスタートしたものの、徐々に天気は下り坂。途中の川も前日以上に増水しており、飛び越えるのがやっとなポイントも。幸い高山病対策の薬が効いていたおかげで、手足の軽いしびれだけで済みました(薬の副作用です)。しかし、最後の2時間は本降りの雨の中をひたすら登る厳しいコンディション。やっとの思いでMintos Hutに到着すると、雲の向こうにうっすらと雪をかぶった頂が姿を現しました。
夜には雪がちらつき、ポーターたちの間では「明日の登頂は大丈夫か?」と会議が始まるほどの天候。私たちも、「安全第一で判断してほしい」と伝えました。


最終日:登頂断念、でも“白銀のケニア山”に感動
登頂予定時刻の午前2時。ポーターから「雪が強いので出発を遅らせます」との声が。結局、出発したのは午前5時。テントを出ると、そこは360度の銀世界!一面の雪景色に驚きつつも、今回のツアーリーダーから「安全のため、ポイント・レナナへの登頂は中止」と告げられました。がっかり…と思いきや、「シリモンルートへの迂回途中にも絶景ポイントがある」とのことで気を取り直して出発。しかしこの下山ルートが、実は登りよりキツかった。雪でぬかるんだ道は滑りやすく、さらになぜか登りが続く。「下山って登るんだっけ?」と苦笑いする余裕もないほど足はがくがく。ポーターが「先日、別のパーティーで滑落事故があったらしい」なんて話も飛び出して緊張が走ります。
最終的には、目標地点のすぐ近く4,600m付近まで登ってからの横移動という強行ルートで下山。下山完了はなんと19時。予想外の時間と体力を使い切った、忘れられない登山となりました。


雨季と乾季は本当に大切
最後にこれだけは伝えたい——「登るなら絶対に乾季にしましょう!!」
ケニアの雨季は二回。小雨季11 - 12月、大雨季4-6月です。
山の景色、自然の美しさは本当に感動モノ。でも天候次第で安全にも大きく影響します。今回の体験を通して、アフリカの自然の雄大さと厳しさを体感しました。
それでも、「また挑戦したい」と思える魅力がケニア山にはありました。次こそは快晴のもと、朝日が昇るポイント・レナナで写真を撮りたい!

