ケニアは紅茶やコーヒーの輸出で有名ですが、実は世界の切り花輸出国のトップであることをご存じでしたか?日本においても2023年の国別輸入バラ数量の1位はケニアで2,100万本、シェアは50%を超えています。
ここ20年ほどで、ケニアは静かに「花の大国」としての地位を築いてきました。切り花産業は今や、同国の主要な外貨獲得源のひとつとなっています。日照に恵まれた気候、高地の冷涼な空気、肥沃な土壌といった条件がそろい、美しいバラやカーネーション、夏の花々が育ちます。そしてそれらの花は、ヨーロッパのスーパーマーケットや花屋の店頭を鮮やかに彩っているのです。特に輸出先としては、オランダ、ドイツ、イギリスが中心です。

咲き誇る産業の支え
花の栽培は主にリフトバレー地域のナイバシャ湖周辺で行われており、広大な温室で年間を通じて栽培が可能です。この産業は15万人以上を直接雇用し、100万人以上の生活を間接的に支えています。多くの農園では点滴灌漑や持続可能な農法が導入され、収穫された花はすぐに冷却・梱包され、ナイロビのジョモ・ケニヤッタ国際空港を通じて、迅速にヨーロッパへと空輸されます。
この効率的な「コールドチェーン(低温物流)」のおかげで、朝に収穫された花が翌日にはロンドンやベルリンの花屋の棚に並ぶというスピード輸送が実現しています。


経済とサステナビリティの両立
2023年、ケニアは20万トン以上の花を輸出し、10億米ドル以上の収益を上げました。この産業は、ケニアのGDPや外貨準備に大きく貢献しています。また、フェアトレードやMPS*などの国際認証を取得し、労働者の権利を守りながら、環境に配慮した持続可能な生産への取り組みも進んでいます。
花がつなぐ世界
バレンタインデーや母の日、あるいは何でもない日に、誰かがロンドンやアムステルダム、東京、パリでバラの花を贈るとき、その花はケニアとあなたを結ぶ小さな架け橋になっているかもしれません。
次に花束を手に取ったときには、その花がアフリカの大地で育ち、国境を越えてやってきた旅路を想像してみてください。ケニアのバラは、単なる花ではなく、美しさ、持続可能性、そしてグローバルなつながりの象徴なのです。
References | Notes
- MPS (Mileu Programma Sierteelt): 園芸分野の国際認証機関