日本で働くことになった、日本語を学ぶ3人の情熱的なケニア人学習者——バラカ、ルワテ、アオコ——が、それぞれの学習の背景と経験を語ってくれました。3人の道のりはそれぞれ異なりますが、共通していたのは「好奇心」「挑戦」「成長」でした。
バラカが日本語に興味を持ったきっかけはアニメでした。字幕なしで好きな番組を楽しみたいというシンプルな動機から始まりました。ルワテはCOVID-19のパンデミック中に学習を始めました。最初は明確な理由がなかったものの、学び始めるとすぐに夢中になりました。アオコは日本でのインターンシップ中に、ルームメイトや友人と自然に会話したいという思いから学習を始めました。日本語の発音やイントネーションの音楽的な魅力に惹かれたそうです。
彼らの学習への本気度は、転機となる出来事によって深まりました。バラカはitalkiアプリで初めて日本人と会話したとき、異文化交流の楽しさに気づきました。ルワテはHelloTalkでの会話から友情が生まれ、さらにJLPT N2試験に挑戦するという大胆な決断をしました。プレッシャーの中で猛勉強し、初挑戦で合格しました。アオコは2022年に東京の日本語学校に入学し、試験合格と流暢に日本語を話せるようになることを目指して本格的に学習を始めました。
学習方法は三者三様でした。バラカは独学でN4レベルに達し、USIU大学で日本語を副専攻として学びました。中村先生の指導のもと、自信と流暢さが増しました。ルワテも独学でN4まで進み、ストラスモア大学の選択科目として日本語を履修しました。独学により大学のカリキュラムより進んでいたものの、大学で体系的に復習することでレベルアップしていきました。アオコは基礎を独学で学び、東京の立教大学の日本語プログラムに参加してスキルを深めました。
学習法は異なりますが、全員が「夢中になること」と「繰り返し」の重要性を強調しました。バラカは発音を磨くために視聴覚ツールを活用。ルワテは様々な方法を試し、WaniKaniアプリや字幕なしの映画視聴に落ち着きました。アオコはInstagramやYouTubeで日本語コンテンツに浸り、アルバイトでの会話を通じて日々練習しました。彼らは「少しずつ吸収する学習」が進歩の鍵だと一致して語りました。
文法・語彙・漢字のバランスについては、バラカは自然に理解が深まったと語り、ルワテは文法と漢字は問題なかったが語彙に苦労したと述べました。N2試験のためにGenkiという教科書全体を集中的に勉強し、WaniKaniアプリで似た漢字を区別しました。アオコは学校と仕事の両立で漢字に苦戦。文法はYouTubeと立教大学の教材で比較的簡単に理解できました。



教材については、バラカはTodaiアプリとHelloTalkアプリをJLPT対策に活用。ルワテはGenkiとTobiraアプリ、WaniKaniアプリ、Ankiアプリを使用。アオコは立教大学の教材、Genki N5、YouTubeを中心に学習しました。


日本語ネイティブとの交流も大きな役割を果たしました。バラカは日本に行っていないものの、HelloTalkで日本人の友人を作りました。ルワテはHelloTalkやLINEで英語の博士課程の学生と交流し、パンデミック後に10日間日本を訪問。偶然の会話から夕食をご馳走になり、電車代まで払ってもらった経験も。アオコは日本で学びながら、アルバイトや日常会話で練習を重ねました。

文化体験も深い学びにつながりました。ルワテは「本音と建前」や「空気を読む」ことの理解が重要だと語り、文化的な流暢さが誤解なく個性を表現する鍵だと考えています。ユーモアを大切にするバラカは、日本文化にそれをどう溶け込ませるかを学びました。アニメは敬語や尊敬語などの話し方の違いを理解する助けになりました。アオコは旅館訪問や買い物などの日常生活を通じて理解を深め、ラベルの読み間違いや誤購入などの初期の失敗が学習意欲を高めました。

誤解は旅の一部であり、記憶に残る瞬間でもあります。バラカは職場で「深い話がしたい」と言おうとして「fukai(深い)」が強すぎて「fukai(不快)」と誤解されたエピソードを笑いながら語りました。ルワテは「高校生の友達と遊んでる」と言ってしまい、現役高校生と遊んでいるように聞こえてしまったことや、「パンツ(下着)」と「ズボン(ズボン)」の言い間違いで笑いが起きたことを共有。アオコはレストランで「大丈夫ですか?」と聞かれ、体調確認だと思って「はい!」と答えた小さな誤解を通じて、文脈の重要性を実感しました。
カジュアルやビジネスの場での会話に慣れるまでの時間について、バラカは約1年と回答。ルワテはHelloTalkのおかげで5〜6ヶ月でカジュアル会話に慣れたが、初対面の日本人との会話には1年ほどかかったと語りました。ビジネス日本語は語彙やトーンが異なるため今も課題ですが、「環境にいることで言語はより理解できる」と述べました。アオコはカジュアルな場では3ヶ月ほどで慣れたが、ビジネス場面ではまだ流暢さを目指して努力中です。
振り返って、新しい学習者へのアドバイスは「止まらないこと」「楽しむこと」「たくさん練習すること」。趣味や文化、興味と結びつけて学ぶことが大切だと語り、JLPTは目標に合うなら受ければいいが、無理に受ける必要はないと助言しました。
もし最初からやり直せるなら、バラカは読解にもっと力を入れ、バランスの取れた学習を目指すと語りました。ルワテは大きな変更はないが、会話にもっと重点を置くと述べました。アオコは最初からもっと真剣に取り組み、時間と努力を惜しまなければよかったと語りました。
3人の共通のメッセージは「失敗を恐れず、前に進むこと」。過度な期待をせず、今の学びに集中すること。謙虚さを忘れず、称賛や評価に惑わされないこと。最悪の日でも言語力が保てるようにすること。自分をコンピューターと子どもとして扱い、すべてを吸収すること。言語は単なる言葉ではなく、世界観の器であることを忘れず、自分に合った学び方を見つけることが重要だと語りました。
2020年の日本語スピーチコンテストで出会ったバラカとルワテは、初めてお互いの日本語を聞いたとき「この人、すごすぎる!」と思ったそうです。