商船三井ケニア社
2025年5月14日

ダルエスサラームにスターバックス1号店がやってきた

     2024年、タンザニア最大の都市ダルエスサラームに東アフリカ初となるスターバックスがオープンしました。これを聞いたとき、「えっ、ナイロビじゃないの?」とまず驚きました。ケニアの首都ナイロビは東アフリカで最も発展している都市と認識されており、多くの国際ブランドがまずナイロビから進出するのが通例と思い込んでいました。そんな中、ダルエスサラームがスタバ第1号店の舞台になったのは意外でした。

店内の木製の壁に掲げられた大きなスターバックスのロゴと「TZ」の文字、柔らかな照明。
スターバックスの外観。曇りガラスの窓と小さな鉢植えが並び、英語と中国語の看板が見える。

そして実際に訪れてみると、2つ目の驚きが待っていました。場所がなんと、街の中心地ではなく、中華街の一角。スーパーのすぐ横にあり、日本でいうと銀座のど真ん中ではなく、チャイナタウンのローカルなお店の中にあったのです(以下写真ご参照)。日本の第1号店が銀座松屋通りという一等地だったことを思うと、ここにも何か戦略的な意図を感じずにはいられませんでした。

T店内のメニューは、ほとんどが中国語表記。おそらくメインターゲットは、タンザニアに多く住む中国人コミュニティなのでしょう。筆者はコーヒーの味には詳しくないのですが、アイスコーヒーを頼んでみたところ、普通に美味しくいただけました
壁にはアメリカの詩人ロバート・フロストの言葉「Freedom lies in being bold.(自由とは、大胆(勇敢)であるということだ)」が掲げられていました。この場所に第1号店を出すという決断をしたオーナーは、まさにその言葉通り“bold(大胆)”だったのだと思います。

木製テーブルの上に置かれたスターバックスのアイスコーヒー、2言語のメニューと「LESS PLASTIC IS FANTASTIC」と書かれたエコストロー。
柱に飾られた「FREEDOM LIES IN BEING BOLD(自由は大胆さにある)」という引用文のアート。

紅茶が主役?タンザニアの飲み物文化
     意外に思うかもしれませんが、タンザニアでは紅茶の方がコーヒーよりもよく飲まれています。たとえば朝ごはんといえばミルクたっぷりの「チャイ」が定番。市場やバスターミナル近くには、チャイを売る屋台が並び、誰もが手軽に一杯楽しめる環境があります。 コーヒーはというと、観光地やおしゃれなカフェで提供されることが多いものの、一般家庭や日常の中ではあまり見かけません。これはケニアやウガンダといった他の東アフリカ諸国と似た傾向です。 ただし、最近では若者や都市部の住民を中心にコーヒー文化も少しずつ広がってきています。特にSNS映えするカフェや海外ブランドの進出が、その流れを加速させている印象です。

注文カウンター、メニューボード、ベーカリーコーナー、座席エリアを含むスターバックス店内の様子。
柱に飾られた「FREEDOM LIES IN BEING BOLD(自由は大胆さにある)」という引用文のアート。

キリマンジャロコーヒー:タンザニアの誇り
    Among そんな中でも、タンザニアのコーヒーと言えばやはり「キリマンジャロコーヒー」。この名前はただの愛称ではなく、タンザニア政府が地理的表示(GI)制度のもと保護している正式なブランド名です。つまり「キリマンジャロ」と名乗れるのは、タンザニアで栽培されたアラビカ種のみ。 このコーヒー豆は標高1,400〜2,000メートルの高地、火山性の肥沃な土壌、そして冷涼で湿度のある気候という最高の条件で育てられます。品種は主にブルボン系のアラビカ種で、酸味が爽やかで香り高い味わいが特徴です。 実は日本ではUCCやキーコーヒーといった大手ブランドが「キリマンジャロコーヒー」を長年扱っており、日本人にとっても馴染みの深い存在となっています。 タンザニアはアフリカで5番目のコーヒー生産国で、コーヒーは重要な輸出品でもあります。ただし、気候変動やインフラの問題により、年によって収穫量にばらつきがあるのも現実です。近年ではサステナブルな農法やフェアトレード認証の広がり、さらにはマイクロロット(個人農園単位)でのスペシャルティコーヒーにも注目が集まっています。
タンザニア国内でも、今後はコーヒーの消費がもっと広がっていくでしょう。その一歩として、ダルエスサラームのスターバックス第1号店のオープンは、象徴的な出来事だったのかもしれません。


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